【京都・大阪の中小企業向け】健康経営優良法人2027に何が起きているか|認定率0.69%と補助金加点の拡大

2026年7月14日、経済産業省で第6回 健康経営推進検討会が開催され、今年度の施策の方向性と「健康経営優良法人2027」の認定要件(案)が示されました。

公開された資料を読み込むと、今回の議論の中心にあるのは明らかに中小企業です。本記事から3回にわたり、検討会で示された内容のうち、中小企業の経営者に直接関係する部分だけを取り上げて解説します。

第1回となる今回は、「そもそも今、中小企業の健康経営はどういう状況にあるのか」を数字で確認したうえで、京都・大阪・兵庫の企業が最初に踏むべき手順までご案内します。

健康経営を経営戦略として議論する会議のイメージ

中小企業の認定率は、わずか0.69%

まず、経済産業省が資料で示した数字をご覧ください。健康経営優良法人の認定数を、日本全体の法人数と比較したものです。

区分 認定数 日本全体の法人数 認定率
大規模法人部門 3,761社 10,364社 36%
中小規模法人部門 23,077社 3,364,891社 0.69%
2026年5月12日時点(経済産業省 第6回健康経営推進検討会 資料2より)

大企業では3社に1社以上が認定を取得しているのに対し、中小企業では1,000社のうち7社にとどまります。

さらに注目したいのが、「健康宣言」を行った企業が全国で約10万社あるという点です。健康宣言は中小規模法人部門の申請に必要な前提条件ですが、宣言を済ませた10万社のうち、実際に認定まで進んでいるのは2万3千社ほど。7万社以上が「宣言はしたが、その先に進んでいない」状態ということになります。

「うちも健康宣言まではやったけれど、そのあと止まっている」——もし心当たりがあるなら、それは決して珍しいことではありません。むしろ全国的に最も多いパターンです。

認定を取っている企業は、人が辞めていない

健康経営優良法人の認定企業と中小企業平均の離職率比較データ(9.0%と13.6%)
健康経営優良法人の認定企業は、同規模企業の平均より離職率が4.6ポイント低い

今回の資料で特に目を引いたのが、日本総合研究所の分析として示された離職率のデータです。健康経営優良法人2026の申請書記載結果をもとに集計されています。

区分 離職率
ブライト500/ネクストブライト1000 9.0%
通常認定/小規模特例認定 10.1%
30〜99人規模企業の平均 13.6%
離職率=離職者数/正社員数。企業平均は2024年度雇用動向調査(令和6年度)

上位認定を受けている企業の離職率は、同規模企業の平均を4.6ポイント下回っています。

この差を、実際の人数に置き換えて考えてみます。従業員30名の会社の場合、離職率13.6%なら年間およそ4名が退職する計算です。これが9.0%まで下がれば、退職者は年間2.7名ほど。年に1〜2名、辞める人が減るということです。

採用にかかる費用と、入社後に一人前になるまでの教育コストを考えれば、この差が経営に与える影響は決して小さくありません。

もちろん、「健康経営に取り組んだから人が辞めなくなった」と単純に言い切ることはできません。人を大切にする会社だから認定も取れている、という側面もあるでしょう。ただ少なくとも、認定を取得している企業群では人が定着しているという事実が、国のデータとして示されたことには意味があります。

国が中小企業を後押しする理由

国が中小企業の健康経営を後押しする理由|骨太の方針2026・日本成長戦略
骨太の方針2026・日本成長戦略が示す、中小企業の健康経営推進の方向性

なぜ今、経済産業省がこれほど中小企業に目を向けているのか。背景には、2026年に相次いで決定された政府方針があります。

  • 経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針):「睡眠対策を含む健康経営の推進」を明記
  • 日本成長戦略:企業・保険者による健康投資額を2025年の約1兆円から、2040年までに約2倍へ拡大する目標を設定
  • 女性版骨太の方針2026:中小企業における女性の健康課題を含む健康経営の取組を支援すると明記
  • 性差に由来する健康課題等への対応を推進するための論点整理(令和8年5月25日):「中小企業等における健康経営の推進」を筆頭項目に

とくに論点整理では、中小企業を重視する理由がこう説明されています。

我が国の成長を支える中小企業において人材確保が大きな課題となっている中、特に規模の小さい中小企業では女性従業員の割合が多い傾向にあるため、性差に由来する健康課題への対応も含めて、中小企業等における健康経営を推進していくことが重要。

国が掲げる「健康投資額を2倍に」という目標は、大企業だけでは到底達成できません。認定率がまだ0.69%にとどまる中小企業をどう動かすかが、これからの政策の焦点になっているのです。

補助金の加点対象が、さらに広がる

健康経営優良法人の認定と補助金加点の関係|ものづくり補助金・IT導入補助金
認定は「補助金を獲得するためのカード」として位置づけられている

ここからは、より実利に直結する話です。

健康経営優良法人の認定について、「社員の健康のための取り組みでしょう」と受け止められることがあります。しかし今回の資料では、認定がはっきりと補助金を獲得するためのカードとして位置づけられていました。

中小企業が活用できる補助金のうち、ものづくり補助金やAI導入補助金等については、健康経営優良法人の認定を取得した中小企業に対して、採択に当たっての加点措置を実施している。

ものづくり補助金は、設備投資に対して数百万円から数千万円規模の補助が受けられる制度です。採択率は公募回によって変動しますが、加点の有無が採否を分けるケースは決して珍しくありません

そして今回、さらに踏み込んだ方針が示されました。

中小企業の健康経営に取り組むインセンティブを拡充するため、健康経営優良法人の認定を取得した中小企業に対して加点措置を行う補助金の種類を拡大していくことが重要

対象がどこまで広がるかは現時点で示されていませんが、国の方針として「認定企業を優遇する補助金を増やす」と明言された意味は大きいと考えています。

認定がもたらす実利は、補助金だけではない

健康経営優良法人の認定メリット|公共工事・金融・自治体・採用・取引と2027年認定スケジュール
認定が有利に働く5つの領域と、2027年認定のスケジュール

すでに制度化されている効果を整理すると、認定は複数の入口から企業に返ってきます。

領域 内容
公共工事 経営事項審査(経審)W点の加点対象(ブライト500以上)
金融 一部金融機関で金利優遇・融資審査での加点
自治体 入札参加資格や独自の補助金での優遇
採用 求人票・会社案内での認定ロゴの活用
取引 大手取引先によるサプライチェーン評価への対応

健康経営優良法人という制度の特徴は、ひとつの社内整備が、これだけ多方面に波及する点にあります。定期健診の受診率を上げる、ストレスチェックを実施する、労働時間を適正化する——いずれも本来やるべきことですが、それを認定という形にすることで、補助金・入札・融資・採用の各場面で評価されるようになります。

2027年認定のスケジュール

今回の検討会では、認定事務局(日本経済新聞社)から具体的な日程も示されました。中小規模法人部門のスケジュールは次のとおりです。

時期 内容
2026年8月17日〜10月16日(金)17時 健康経営優良法人 認定申請
2026年11月頃 請求書送付
2026年12月頃 振込期限
2026年12月〜2027年1月 審査期間
2027年2月 内定
2027年3月 健康経営優良法人の発表

ここで押さえておきたいのが、認定は申請してすぐ取れるものではないという点です。今年の秋に申請しても、認定企業として名乗れるのは2027年3月以降になります。

「来年度のものづくり補助金で加点を取りたい」と考えるなら、逆算すると動き出しは今、申請は10月16日までということになります。補助金の公募が始まってから慌てても、そのタイミングでは認定は間に合いません。

さらに申請書には、過去の取り組み実績を記載します。申請直前に慌てて整えるのではなく、日々の運用そのものが問われる点にも注意が必要です。

京都・大阪・兵庫の企業が、最初に踏むべき手順

健康経営優良法人の申請・エントリー方法|京都府・大阪府の健康宣言事業
京都府・大阪府の企業が最初に踏むべき健康宣言事業へのエントリー手順

ここまで読んで「では申請しよう」と思われた方に、ひとつ重要な前提があります。

健康経営優良法人(中小規模法人部門)に申請するには、加入している保険者が実施している健康宣言事業への参加が必要です。いきなり申請書を出せるわけではありません。

協会けんぽに加入している企業の場合、窓口は都道府県支部ごとに分かれています。関西の主な制度を整理しました。

京都府の企業の場合

協会けんぽ京都支部の「京(きょう)から取り組む健康事業所宣言」にエントリーします。

  • 対象:協会けんぽ京都支部の加入事業所
  • 要件:必須項目3つに加え、提示された取り組み項目から2項目以上を選択
  • 健康づくり担当者(健康保険委員)の登録が必要
  • 申込:エントリーシートに記入し、協会けんぽ京都支部へ郵送またはFAX

「健康づくり担当者の設置」は、次回解説する認定要件でも必須項目です。宣言の段階で担当者を決めておけば、そのまま申請要件を満たせます。

また京都府には、府独自の「きょうと健康づくり実践企業認証制度」もあります(現在募集中)。健康経営優良法人と並行して取得しておくと、地域での認知度向上につながります。

大阪府の企業の場合

協会けんぽ大阪支部の健康宣言事業からスタートします。あわせて、府の「大阪府健康づくりアワード」では、特色ある中小企業の健康づくりの取組みが表彰されています。

大阪市内に本社がある企業には、さらに手厚い制度があります。大阪市健康経営応援プロジェクト「OK!プロジェクト」です。

  • 対象:大阪市内に本社があり、健康経営優良法人の中小規模法人部門に該当する企業
  • 内容:サポート担当が訪問して職場の状況をヒアリングし、オーダーメイドで施策を提案。健康講座、受診勧奨資材の提供、参加型イベントの実施サポート等
  • 費用:訪問・個別アドバイス・健康講座はすべて無償(認定申請時の申請料16,500円税込は別途必要)

大阪市内の企業であれば、まずここに相談するのが最短ルートです。

兵庫県の企業の場合

協会けんぽ兵庫支部の健康宣言事業に加え、兵庫県には「健康づくりチャレンジ企業」の登録制度と、そこから優れた取組を表彰する「兵庫県健康づくりチャレンジ企業アワード」があります。

当社がご支援している大塚ファンド株式会社(姫路市・従業員9名・全社員フルリモート)も、2026年6月の第9回アワードで協会けんぽ兵庫支部長賞を受賞されました。従業員10名未満の企業でも、県から評価される取組は十分に実現できます。

まとめ

  • 中小企業の認定率は0.69%。裏を返せば、取得すれば地域で希少な存在になれる
  • 認定企業の離職率は9.0〜10.1%で、同規模企業の平均13.6%を大きく下回る
  • ものづくり補助金・AI導入補助金ではすでに加点があり、対象補助金はさらに拡大する方針
  • 2027年認定の申請期間は2026年8月17日〜10月16日、発表は2027年3月
  • 申請の前提として、京都は「京から取り組む健康事業所宣言」など、保険者の健康宣言事業への参加が必要

「まだ様子を見てもいい」という判断もあり得ます。ただ、国の支援策がこれだけ手厚く用意されている今は、最も動きやすいタイミングだと言えます。

次回は、健康経営優良法人2027の認定要件がどう変わるのかを詳しく解説します。とくに長時間労働への対応は、中小企業にとって今年が実質的な猶予期間となる重要な変更点です。

自社が何から始めればよいか、認定要件をどこまで満たせているか——具体的な進め方については、お気軽にご相談ください。

※本記事は経済産業省「第6回 健康経営推進検討会」資料(2026年7月14日公開)に基づいています。認定要件等には検討会での提案(案)段階の内容が含まれます。