更年期・PMSは「経営課題」です|健康経営優良法人の認定要件「女性の健康保持・増進」に何から取り組むか【セミナー開催報告】

2026年7月17日、弊社主催の健康経営セミナー「1分で整う! 自律神経とコンディションマネジメント講座 −女性の健康課題と呼吸セルフケア−」をオンラインで開催しました。

講師は、社会保険労務士の中山 広子(なかやま ひろこ)先生。経営者・人事ご担当の方を中心にご参加いただき、90分にわたって女性の健康課題と、その場でできるセルフケアを学ぶ時間となりました。

本記事では、当日の内容から中小企業の実務にそのまま使える部分を整理してご報告します。「女性の健康課題に取り組みたいが、具体的に何をすればいいのか分からない」——現場で最も多くいただくこのお声への、ひとつの答えです。

開催概要

項目 内容
日時 2026年7月17日(金)16:00〜17:30
テーマ 1分で整う! 自律神経とコンディションマネジメント講座
−女性の健康課題と呼吸セルフケア−
講師 社会保険労務士 中山 広子 氏
開催方法 オンライン(Zoom)
主催 おおつかFPコンサルティング/MFA株式会社

「女性の健康」は、健康経営の認定要件そのものです

健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定要件には、選択項目⑨「性差・年齢に配慮した職場づくり」があり、その中に「女性の健康保持・増進に向けた取り組み」(設問Q21)が置かれています。

つまり女性の健康課題への対応は、「余裕があればやったほうがよいこと」ではありません。国が評価項目としてはっきり位置づけているものです。

中山先生は、その前提として次の点を強調されました。

女性の健康課題は、女性本人だけの問題ではありません。家族、子ども、職場、そして社会全体の健康につながっています

女性は妊娠・出産・更年期など、ライフステージごとに健康課題が変化します。今そこに取り組むことは、現在働く女性を支えるだけでなく、次の世代の健康、そして将来の社会全体への投資になる——という捉え方です。

なぜ「経営課題」なのか

経営者の方の反応が大きかったのが、次の事実でした。

見落とされがちな事実 経営への影響
女性の2人に1人が50歳以上 40〜50代は管理職・専門職として、経験とスキルが最も高い層
40〜50代は心身の変化が大きい時期 不調によるパフォーマンス低下、休職、そして離職

職場を見渡したとき、女性のおよそ半数が50歳以上——そしてその年代は、企業にとって最も手放したくない人材層と重なります。更年期の不調をきっかけにキャリアを諦めてしまう方も現実にいらっしゃる、というお話でした。

だからこそ、女性の健康への支出はコストではなく人材への投資として捉えられている。経験豊富な人材の流出を防ぐという意味で、これは明確に経営の話です。

経済産業省の調査でも、健康経営に取り組む企業の関心事として「女性特有の健康問題対策」が半数を超えていたことが紹介されました。課題があることは分かっている。けれど扱い方が分からず、触れずに置いている——多くの企業がこの状態にある、という指摘です。

女性の3大健康課題

課題 時期 職場に出やすい形
① 月経困難症・子宮内膜症 月1回の生理時 腹痛による早退・欠勤
② 月経前症候群(PMS) 生理前の約10日間 イライラ、精神的な不安定さ
③ 更年期の不調 主に40〜50代 心身の不調、パフォーマンス低下

②のPMSは人によって差が非常に大きい点が重要です。全員に同じように起きるわけではなく、また普段なら何とも思わない一言に強く傷ついてしまう時期がある。この2点を知っているかどうかで、職場の受け止め方は大きく変わります。

更年期に、体の中で起きていること

職場で働く40代・50代の女性のイメージ

参加者の反応が最も大きかったのが、この説明でした。

女性ホルモン(エストロゲン)は加齢とともに減っていきます。それでも脳は「ホルモンを出してください」という指令を送り続けるため、指令と実際の分泌がかみ合わない状態が生まれます。さらに、減ったエストロゲンの代わりとなるホルモンが出てくる時期があり、その入れ替わりが「揺らぎ」のように続きます。

この揺らぎの時期に、心と体の不調が表面化します。中山先生の言葉です。

性格が急変したのではありません。抗えない体のバグです。

「最近、不機嫌なことが増えた」「ぼんやりしている時間がある」「以前はてきぱき動いていたのに、様子が違う」——見えているのは表面だけで、その裏側でホルモンによる大きな変化が起きている。ここを知っているかどうかが、周囲の理解の分かれ目になります。

更年期のサインは「体」と「心」の両方に出る

体の不調 心の不調
全身のだるさ・疲労感/めまい/ホットフラッシュ(のぼせ・発汗) 感情の起伏が激しくなる
関節痛(手の関節・四十肩)/腰痛・膝の痛み/肩こり ぼんやりする時間が増える/集中力・記憶力の低下
腹部の膨満感/便秘・下痢 気分が沈む/漠然とした不安
食欲のムラ・低下 夜になると電池が切れるように動けなくなる
症状の出方には個人差があります。「自分は更年期がきつくないほう」という方でも、小さな変化としては出ていることが多いそうです

セミナーでは、SMI(簡略更年期指数)を使ったセルフチェックの時間も設けられました。項目ごとの点数を合計し、高ければ気をつけたほうがよい、というシンプルな指標です。自分の状態を客観視する物差しとして、社内研修にも取り入れやすい内容でした。

更年期は、女性だけのものではありません

男性にも更年期があります。ただし急激なホルモン変化ではなく、緩やかに進行するため気づきにくい。40代あたりから「仕事のパフォーマンスが落ちた」「今までやる気があったのに急に出なくなった」という形で表れ、自分でも原因が分からず相談に来られる方がいる、というお話でした。

男女どちらにも起こりうる。この認識を持てるかどうかも、職場づくりでは大きな差になります。

職場でできるサポートと、避けたい言葉

ここが、明日から使える最も実務的な部分です。

してほしいこと 中身
共感する 解決しようとせず、まず100%寄り添って肯定する
家事・仕事の主体的な分担 「手伝う」ではなく、自分から引き受ける
肉体的なサポート 負荷の高い作業を代わる
環境の調整 空調・席・休憩など、過ごしやすく整える
受診の同行、サプリの用意 横についていくだけでも安心感がまったく違う

NGワード

  • 「気のせいだよ」「大丈夫だよ」
  • 「ちょっと怠けてるんじゃない?」
  • 「もう年だから仕方ないよ」
  • 「いつもイライラしてるね」

いずれも軽い気持ちで出てしまう言葉です。しかしこの時期は、普段なら何とも思わない言葉もマイナスに変換されて心に刺さります。特に社内で相談を受けた場面での「もう年だから仕方ない」は、決して口にしてはいけない言葉として挙げられました。

男性管理職がやりがちな、最大の落とし穴

今回、男性の参加者に最も刺さっていたのがこの指摘です。

相談されたとき、つい「病院に行ってみたら」「このサプリを飲んでみたら」と解決策を出してしまう。気持ちはよく分かりますし、普段ならそれで問題ありません。でもこの時期は、解決策の提示はいったんストップです。

女性は共感してほしい、男性は解決したい。この違いから、社内でコミュニケーションのすれ違いが起きます。個人面談のあとに相手のやる気が大きく下がってしまうケースの多くが、ここに原因があるそうです。

ではどう聞くか。「最近、体調はどうですか」「しんどいですよね。そんな中で頑張っていますよね」——まず寄り添う。それだけで面談の結果は変わります。

治療という選択肢について

ホルモン補充療法(HRT)についても触れられました。以前は副作用が懸念されていましたが近年は状況が変わってきており、貼付タイプは副作用が比較的少ないとして使われるようになっている、とのことです。骨からカルシウムが急激に失われる時期を補う作用もあり、健康寿命の観点からも用いられています。

ただし中山先生は、受診の前によく調べてから行ってほしいと繰り返されていました。この分野に必ずしも明るくない医師もいるためです。会社としては「治療を勧める」のではなく、本人が情報を集め、相談に行きやすい環境を整えるところが役割になります。

1分でできる呼吸セルフケア(4−2−6)

セミナーのハイライトが、この呼吸のワークでした。

なぜ呼吸なのか

脳の中心にある帯状回(たいじょうかい)という部位が、ストレスへの対処に関わっています。本能的な衝動が湧き上がってきたとき、それを受け止めて処理する部分です。

この帯状回は血流が良くならないと働きません。そして血流を高める方法として最も確かなものが呼吸法・瞑想である、という説明でした。経営者に瞑想を習慣にしている方が多いのも、マインドフルネスが広まったのも、ここに理由があります。

やり方

  1. まず、息を全部吐き切る
  2. 鼻から4秒吸う
  3. 2秒止める
  4. 6秒かけてゆっくり吐く

これを数回繰り返します。2秒止めるのがきつければ、止めなくても大丈夫です。ただしこの「止める」時間に体内で二酸化炭素が作られ、呼吸の反応が変わってくるとのことでした。

イメージを添えると、さらに効果的だそうです。吸うときは周りへの感謝を指先まで行き渡らせるイメージで。吐くときはいらない思考を全部出すイメージで。

1日1回、朝起きたときか就寝前に。おすすめは朝、ベランダで朝日を浴びながら行うことだそうです。

なお、スマートフォンやパソコンで前かがみの姿勢が続くため、そもそも呼吸が浅くなっている方が増えているとのこと。研修の現場では、若い世代ほど「4秒吸って4秒吐く」だけでもきついという声が出るそうです。道具も費用もいらず、その場で全員ができる——健康経営の入り口として、これほど始めやすい施策はありません。

脳の特性を数値で見る「B-Brain」

中山先生は、脳の診断プログラムB-Brainを用いたカウンセリングや企業研修も行われています。

ウェブ上の設問に答えることで、思考特性を4つの脳タイプに分類し、あわせてメンタルの状態を数値化できるツールです。

タイプ 特徴
左脳・3次元 いわゆる経営者脳。合理的に、結果から逆算して考える
右脳・3次元 創業者タイプ。未知の分野へ押し広げていく
左脳・2次元 職人タイプ。計画をコツコツやり切る
右脳・2次元 相手目線で考えられる。深い人間関係を築ける

特徴的なのは、ストレス耐性・モチベーション・依存度・不安といったメンタルの項目が数値で出る点です。「自分は今こういう状態です」と言葉にできる人は多くありません。数値化されていれば、変化に早く気づけて、早く手を打てます。

このB-Brainは、脳神経外科医が積み重ねた覚醒下手術の知見をもとに開発され、筑波大学の研究センターでデータ化・ブラッシュアップされたものだそうです。現在は大手企業の研修などでも使われているとのことでした。

中小企業は、まず何から始めればよいか

今回の内容を、認定要件の文脈に置き直すと次のようになります。

やること ハードル
女性の健康課題を知る機会を社内につくる(今回のような研修) 低い
管理職向けにNGワードと聞き方を共有する 低い
相談できる窓口・担当を決めて明示する
休暇・勤務時間の柔軟な運用を整える

最も効果が大きいのは、経営者と管理職が「知っていること」です。制度をつくる前に、知識と言葉づかいが変わるだけで職場は変わります。予算もかかりません。

そして健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)の認定申請は、2026年8月17日〜10月16日(金)17時です。今年度の要件では、⑤「ワークライフバランスの実現に向けた取り組み」と⑭「長時間労働の予防と事後対応」が変更点となっています。2027年の認定取得を目指すのであれば、今から動く必要があります。

京都・大阪・兵庫の中小企業さまへ

当社は京都府宇治市を拠点に、京都・大阪・兵庫・滋賀・奈良の中小企業さまの健康経営を支援しています。代表の大塚は健康経営エキスパートアドバイザーとして、健康宣言の段階から認定取得、そしてブライト500まで、企業の状況に応じて伴走しています。

今回のセミナーでお伝えしたとおり、女性の健康課題への取り組みは認定要件に明確に位置づけられています。一方で「具体的に何から始めればよいか分からない」というお声を、現場では最も多くいただきます。

  • 中山先生を講師にお迎えした社内研修・セミナーのお繋ぎ
  • 健康経営優良法人の認定に向けたサポート
  • 従業員のみなさまへの個別相談(健康・ライフプラン・資産形成)

まずは15〜30分ほど、オンラインでお話を伺うところから始められます。「もう少し詳しく聞いてみたい」という段階でも、どうぞお気軽にご連絡ください。

こうした健康経営セミナーは継続して開催しております。次回のご案内は、決まり次第公式LINEでお知らせいたします。

※本記事は2026年7月17日開催のセミナー内容をまとめたものです。健康・医療に関する記述は一般的な情報であり、診断・治療に代わるものではありません。症状については医療機関にご相談ください。認定要件については、健康経営優良法人認定事務局の公表資料をご確認ください。