【京都・大阪の中小企業向け】健康経営優良法人2027の認定要件|変更点と申請の実務

前回は、中小企業の健康経営優良法人の認定率が0.69%にとどまる現状と、補助金加点の拡大方針についてご紹介しました。

今回は、2026年7月14日の第6回 健康経営推進検討会で認定事務局から示された、健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)の認定要件(案)を具体的に解説します。

今年の申請を考えている経営者の方は、この記事の要件一覧をチェックリストとしてお使いください。

健康経営優良法人の認定取得を目指す企業のイメージ

今年の改訂方針は「回答負担の軽減」

まず朗報からお伝えします。認定事務局が示した今年の改訂方針は明快でした。

健康経営度調査回答数、健康経営優良法人への申請数ともに増加。但し、設問数が多い・回答負担が大きいとの声は引き続き存在。更に多くの企業に健康経営に取り組んでもらうために、調査票改訂においても、回答負担の軽減に取り組む。

中小規模法人部門については、「回答事項が明確になるよう、回答例などを見直し」が具体的な改訂内容として挙げられています。

つまり今年は、要件が厳しくなる年ではなく答えやすくなる年です。「申請書を見たけれど何を書けばいいか分からず、そのままにしていた」という企業にとっては、再挑戦しやすいタイミングと言えます。

必ず満たす必要がある「必須項目」

認定要件を確認する社内ミーティングのイメージ

中小規模法人部門の認定要件は、必須項目と選択項目に分かれています。まず、ひとつでも欠けると認定されない必須項目から確認します。

区分 評価項目
1. 経営理念・方針 健康宣言の社内外への発信、および経営者自身の健診受診
2. 組織体制 健康づくり担当者の設置
2. 組織体制 (求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データの提供
3. 制度・施策実行 健康経営の具体的な推進計画
3. 制度・施策実行 受動喫煙対策に関する取り組み
4. 評価・改善 健康経営の取り組みに対する評価・改善
5. 法令遵守 定期健診の実施、50人以上の事業場でのストレスチェック実施、労働基準法・労働安全衛生法違反での送検がないこと等

意外と見落とされやすいのが「経営者自身の健診受診」です。従業員の健康にばかり目が向きがちですが、社長本人が健診を受けていなければ、そもそも要件を満たしません。

また「健康づくり担当者の設置」は、専任の担当者を雇う必要はありません。社内で誰か1人を決めて明示するだけで満たせる項目です。

「健康宣言」は地域ごとに窓口が違います

必須項目の筆頭にある「健康宣言」は、加入している保険者の健康宣言事業に参加することで満たします。関西の主な窓口を整理しておきます。

地域 健康宣言事業
京都府 協会けんぽ京都支部「京(きょう)から取り組む健康事業所宣言」(必須項目3つ+選択2項目以上、健康保険委員の登録が必要)
大阪府 協会けんぽ大阪支部の健康宣言事業
兵庫県 協会けんぽ兵庫支部の健康宣言事業/兵庫県「健康づくりチャレンジ企業」登録
健康保険組合・国保組合等に加入している場合は、加入先の保険者にご確認ください

京都府の「京から取り組む健康事業所宣言」では、宣言の段階で健康づくり担当者(健康保険委員)の登録が求められます。これは認定要件の必須項目「健康づくり担当者の設置」とそのまま重なるため、宣言を済ませた企業は1項目を自動的にクリアしていることになります。

選択項目は「いくつ満たすか」で判定される

選択項目は3つのグループに分かれており、それぞれ必要な充足数が決まっています。

グループ 項目 必要数
(1) 健康課題の把握 ①定期健診受診率(実質100%)/②受診勧奨/③50人未満事業場のストレスチェック 2項目以上
(2) 土台づくり ④教育機会/⑤ワークライフバランス/⑥育児・介護の両立支援/⑦コミュニケーション/⑧治療と仕事の両立/⑨女性の健康/⑩高年齢従業員 2項目以上
(3) 具体的対策 ⑪保健指導/⑫食生活/⑬運動機会/⑭長時間労働の予防と事後対応/⑮心の健康/⑯感染症予防/⑰喫煙率低下 4項目以上
小規模法人特例に該当する場合、(3)は2項目以上に緩和されます

そして上位認定については、明確な基準が示されています。

ブライト500・ネクストブライト1000は、①〜⑰のうち16項目以上

全17項目のうち16項目。上位認定を目指すなら、ほぼすべての項目を埋める必要があるということです。逆に言えば、通常認定は「(1)から2つ、(2)から2つ、(3)から4つ」で到達できます。すでに定期健診やストレスチェックを実施している企業であれば、決して高いハードルではありません。

変更点①:「適切な働き方」が「ワークライフバランス」へ

ここからが今年の改訂の本題です。まず、選択項目⑤の名称と中身が変わります。

年度 評価項目名 確認される内容
令和7年度 適切な働き方実現に向けた取り組み a.労働時間の適正化/b.休暇の取得促進/c.柔軟な働き方の実現
令和8年度(案) ワークライフバランスの実現に向けた取り組み a.休暇の取得促進/b.柔軟な働き方の実現

これまで含まれていた「労働時間の適正化」がこの項目から外れ、次に説明する長時間労働の項目へ移動します。単なる名称変更ではなく、中身の組み替えです。

変更点②:「長時間労働の予防と事後対応」への統合

働き方と労働時間の適正化に取り組む職場のイメージ

今回の改訂で、中小企業にとって最も重要なのがこの変更です。

年度 評価項目名 確認される内容
令和7年度 長時間労働者への対応に関する取り組み 長時間労働者への対応
令和8年度(案) 長時間労働の予防と事後対応 a.労働時間の適正化/b.長時間労働者への取り組み

つまり、「長時間労働を発生させないための予防」と「実際に発生した長時間労働者への対応」を、一体で問う設問に再構成されます。

そして決定的に重要なのが、充足条件です。認定事務局の資料には、こう明記されています。

中小規模法人部門においては、長時間労働の予防と事後対応のいずれかを実施していることをもって評価項目適合とする(ただし、来年度からは長時間労働の予防と事後対応の両方を実施していることをもって評価項目適合とする)。

部門 令和8年度(2027年認定) 令和9年度(2028年認定)以降
大規模法人部門 a・b両方が必要 a・b両方が必要
中小規模法人部門 a・bのいずれかでよい a・b両方が必要(予定)

今年は片方でよいが、来年からは両方が必要。この1年が、実質的な猶予期間ということになります。

猶予期間のうちに整えておくこと

それぞれ、実務として何をすればよいのかを整理します。

a. 労働時間の適正化(予防)

  • 勤怠システム等による労働時間の客観的な把握
  • 残業時間の上限ルールと、事前申請制の運用
  • 特定の社員に業務が集中しないよう、業務分担を見直す
  • ノー残業デーなど、全社的な取り組み

b. 長時間労働者への取り組み(事後対応)

  • 一定の労働時間を超えた従業員に対する産業医面談の実施
  • 該当者への個別ヒアリングと業務量の調整
  • 医師の意見に基づく就業上の措置

多くの中小企業では、労働基準法への対応としてaは何らかの形で実施しています。手薄になりがちなのはbです。「月80時間を超えた社員が出たとき、誰が何をするのか」が決まっていない会社は、決して少なくありません。

来年からの要件化を見据えれば、今年の申請にあわせてbの仕組みまで作ってしまうのが最も効率的です。申請書の記載欄が、そのまま社内ルール整備のチェックリストとして機能します。

新設される「PHR」の設問

健康診断のデータを活用するイメージ

もうひとつ、2027年の申請書には新しい設問が加わります。

中小規模法人部門において、健康経営の一環としてPHRを活用できる環境の整備状況を確認できるようアンケート設問を新設

PHR(Personal Health Record)とは、健康診断結果をはじめ、体重・血圧・血糖値などの個人の保健医療情報を指します。実務的には、健診結果やライフログ(歩数・睡眠時間など)を、従業員本人がスマホやWebで継続的に確認できる状態にすることです。

この設問はアンケート項目(配点なし)として新設されるため、回答内容が直接合否を左右するわけではありません。ただし、健康経営度調査ではアンケート項目として実態を把握し、その後に評価項目へ格上げされるという流れが繰り返されてきました。今年のアンケート項目は、数年後の認定要件の予告編と捉えておくのが安全です。

なお大規模法人部門では、令和7年度の調査ですでに約6割の企業がPHR活用に着手しています。

中小企業が今からできることは、大がかりなシステム導入ではありません。

  • 自社の健診結果を、有所見率や項目別の傾向として集計してみる
  • 加入している協会けんぽ・健康保険組合から、事業所単位の健康データの提供を受けられるか問い合わせる
  • 健診結果をWebやアプリで経年閲覧できるサービスを検討する(健診機関がオプションで提供している場合があります)

ちなみに、必須項目の「(求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データの提供」は、そもそも健診データを保険者に提供できる状態にしておくことを求めるものです。PHR以前に、認定の前提条件でもあります。

見落とされがちな「仕事と介護の両立支援」

選択項目⑥「仕事と育児または介護の両立支援の取り組み」も、押さえておきたい項目です。

経済産業省が公表した健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)の申請書集計を見ると、すでに認定申請をするほど健康経営に前向きな企業でも、介護対応は進んでいないことがわかります。

取り組み内容 実施率
担当者を設置した組織体制ができている 31%
両立支援へ取り組むメッセージを経営層から発信している 28%
相談窓口を設置し、活用事例等を伝えている 26%
従業員の現在・将来的な介護状況、課題等を把握している 20%
介護や両立に関する従業員・管理職向け研修の実施 13%
特に行っていない 14%

最も実施率が高い項目でも31%。裏を返せば、ここに手を付けるだけで上位3割に入れるということでもあります。

経済産業省は、介護という課題の性質をこう説明しています。

介護は初期的な対応を行うことで、一定程度マネジメント可能な課題であり、早期に対応することでリスク回避でき得るが、介護に直面するまで情報に触れる機会が限られ、企業や個人を含め社会全体のリテラシーや当事者意識が醸成されにくい、という取組が進みづらい構造的課題が存在。

中小企業では、40代から50代のベテラン社員が事実上の中核を担っているケースが大半です。その層が親の介護に直面したとき、相談できる先が社内になければ、相談ではなく退職の申し出という形で表面化します。

最初の一歩は、費用をかけずに実施できます。

  • 経営者が一言発信する——「介護と仕事の両立は会社として支える」と朝礼や社内文書で明言する
  • 窓口を決める——「介護のことはこの人に聞けばいい」と示す。必須項目の健康づくり担当者と兼ねても構いません
  • 実態を把握する——匿名アンケートで「現在介護を担っているか」「今後5年以内に直面しそうか」を確認する
  • 制度を伝える——介護休業・介護休暇は法定制度としてすでに存在します。「知らなかった」で辞められるのが最ももったいないケースです

まとめ

  • 今年の改訂方針は回答負担の軽減。中小規模法人部門は回答例が見直され、答えやすくなる
  • 必須項目には経営者自身の健診受診が含まれる(見落とし注意)
  • 選択項目は(1)2項目以上・(2)2項目以上・(3)4項目以上。ブライト500等を狙うなら17項目中16項目以上
  • ⑭は「長時間労働の予防と事後対応」へ統合。中小企業は今年は片方でよいが、来年からは両方必須
  • PHR設問が新設(アンケート項目)。介護両立支援は認定申請企業でも14%が未着手

認定要件は現時点で「案」の段階ですが、この方向性が変わることはまず考えられません。

次回は最終回として、国が用意している支援制度をどう使うか、そして新しく始まる「テーマ別ベストプラクティス」で中小企業40社が選定される制度についてご紹介します。

自社が何項目を満たせているか、申請前の棚卸しをお手伝いします。お気軽にご相談ください。

※本記事は経済産業省「第6回 健康経営推進検討会 参考資料1-1」(2026年7月14日公開)に基づいています。認定要件は案の段階であり、最終的な内容は認定事務局の発表をご確認ください。